円熟期に突入した王道クリエイター ……

当ブログに於いての“最多登場デザイナー”であるトム フォードさん。

2005年に御自身のシグネチャー ブランドを創設以来、本業(デザイナー)以外でも映画監督として『 A Single Man ( シングルマン )  2009 』、『 Nocturnal Animals ( ノクターナル アニマルズ )  2016 』で世界的権威のある映画賞を数多く受賞したり、正に“天才マルチクリエイター”として才能炸裂中で御座います。

因みに、2014年にはリチャード バックリーさん ( Richard Buckley : 1948〜 ) との同性婚を発表。あらゆる意味で“21世紀を代表するファッション クリエイター”として、後世に長くソノ名前を残すのは間違いないかと思われます……………

 

 

トム フォードさん ( Tom Ford : アメリカ , 1961〜 )

 

 

シグネチャー ブランドのスタート時は、“サヴィル ロウ ( Savil Row : オーダーメイド テイラーで有名なロンドン ストリート ) スタイル”を彷彿とさせる芸風でありましたが、次第にGUCCIで世界を魅了した“トム フォード流ラグジュアリー テイスト”を醸し出し、今やTom Fordと云えば、ハリウッド セレブからジェームズ ボンドまで御用達。もはや、現代を代表する“スーパー ブランド”として完全に確立されました。

 

 

 

 

そんなトム フォードさん。

最近特に異彩を放っておりますのは、意外にもドレスやスーツではなく、極めて“スタイリッシュでシンプル”なサングラスと、何とも“美しくて妖麗”なレディース シューズで御座います……………

 

 

 

 

 

サングラスに関しましてはボストン、ウエリントンetc.ベーシック デザインが中心でありますが、デザイナー サングラスに有りがちな“手抜き感ゼロ”のクラフツマンシップを感じさせます。加えて広告写真も、最近では珍しい“王道路線”を徹底した、“直球勝負”の力強さ漲る広告シリーズを展開中。

 

そして、サングラスよりも更に注目すべきは、“まるで宝石ライク”な美しさとユーモア センスに満ちたレディース シューズ……………

 

 

 

 

❇️ 1980年代のパリ。

尊敬する“某誌 ファッション エディターさん”から「“魅力的な女性”にハイヒールをプレゼントするなら、CHARLES JOURDAN ( シャルル ジョルダン ) かYves Saint Laurent ( イヴ サンローラン ) を選べば間違いない。」と教わりました。

( 私の記憶が正しければ、CHARLES JOURDANさんとYves Saint Laurentさんは、同じ製造元で生産されており木型も殆ど同じだったと思います。確かに1970年代〜1980年代に於いて、コノ2ブランドは“エレガントさ”で他ブランドを一歩リードしていた感がありました。)

 

❇️ 2018年現在。

「“危険な香りの女性”にハイヒールをプレゼントするなら、Tom Fordを選べば間違いない。」と断言させて頂きます!

 

 

 

 

“Tom Fordさん作品で踏まれたい(?)”変態オッサンでありました……………

 

 

 

 

( 画像1、5〜12はトム フォードさんのTumblrから拝借。画像2〜4はネットから拝借。)

罪と罰 ……

2017年度末から本年度に掛けて発生した事件で、“進展”もしくは“終息”を待って御紹介したいと考えていた“ある案件”がありましたが、マス メディア並びに在米メル友からも新情報が提供されませんので、本日ココに取り上げさせて頂きます。

2017年、ハリウッドの超大物プロデューサー、ハーヴェイ ワインスタインさんが“セクハラ問題”で失脚。余波は世界中のあらゆるジャンルへと飛び火して、現在“世界的 #MeTooムーブメント真っ只中”なのは御存知の通りでありますが、今回の案件は“バイ セクシャル問題”も含んでおり、事態はチョット複雑であります(以下引用)……………

 

 

【 今度の性被害者は男性モデル!ヴォーグ誌が著名写真家を「クビ」に 】( Newsweek )

米ヴォーグ誌が、セクハラ疑惑の渦中にある著名なファッション写真家2人を「クビ」にした。13日にニューヨーク・タイムズ紙は、写真家のマリオ・テスティーノ(63)とブルース・ウェバー(71)のセクハラを告発する多くの男性モデルの声を伝えた。これを受けてヴォーグのカリスマ編集長アナ・ウィンターは、テスティーノとウェバーには「当面の間」仕事を依頼しないと発表した。

テスティーノに対しては13人の男性モデルおよび元アシスタントがセクハラ被害を訴えているほか、ウェバーに対しては15人の男性モデルから、性的な行為を強制されたほか、撮影の最中に必要もないのに裸にさせられたとの声が上がっている。ウェバーは、カルバン・クラインのセクシーなCMを撮影したことでも知られる。「セクハラは絶え間なく続いた」と、テスティーノと90年代に一緒に仕事をした元アシスタントは述べている。( 2018年1月15日 )

 

 

当ブログではスッカリお馴染みのブルース ウェーバーさん。

今現在“存命している写真家”の中で、ファッション フォトグラフに於いては間違いなく“世界の頂点に君臨する写真家”で御座います。

 

 

左からブルース ウェーバーさん、アナ ウィンターさん ( ヴォーグUSA 編集長 ) 、ラルフ ローレンさん ( デザイナー ) 、何とも豪華な“モード界 大御所3ショット”。

 

そんなブルース ウェーバーさんと“双璧を成す存在”のマリオ テスティーノさん。

[ Mario Testino : ペルー ( 現在はイギリス国籍 ) , 1954〜 ]

 

 

ブルース ウェーバーさんの芸風が“グラマラス”や“スキャンダル”という表現に象徴され、“緊張感”と“説得力”を強烈にアピールした写真であるのに対して、マリオ テスティーノさんの世界観は、“ブルース ウェーバーさんを若干ソフトにした感じ”と云えば分かり易いかと思います。故に“2大ファッション フォトグラファー”と称されるお二人でありますが、マリオ テスティーノさんに関しましては、故 ダイアナさんのポートレイトが特に有名かと……………

 

 

『 DIANA / MARIO TESTINO  1997 』

 

 

因みに、ヘアメイク時代の私にとってマリオ テスティーノさんは、ブルース ウェーバーさん同様に“憧れのスーパー フォトグラファー”として、極めて特別な存在でありました。

 

 

『 GUCCI / MARIO TESTINO  1996 』

 

『 MICHAEL KORS / MARIO TESTINO  2015 』

 

 

現時点では“アメリカ版のみ”でありますが、ブルース ウェーバーさんとマリオ テスティーノさんが“天下のVOGUE誌”から締め出されたという事実は……………

 

❇ メジャー リーグ ベースボールに例えた場合。

「 ニューヨーク ヤンキース 」さんと「 ロサンゼルス ドジャース 」さんの2球団が、ペナントレース中に“協会を不可逆的脱退”に相当。

❇ F1 グランプリに例えた場合。

「 フェラーリ 」さんと「 メルセデス AMG 」さんの2チームが、シーズン中に“連盟を不可逆的脱退”に相当。

 

つまり、モード界の歴史に残る大事件であると同時に、ファッション エディトリアル界にとって“前代未聞の大損失”なので御座います!

 

 

『 British Vogue / MARIO TESTINO  2016 』

 

『 French Vogue / MARIO TESTINO  2016 』

 

『 American Vogue / MARIO TESTINO  2015 』

 

 

確かに“セクハラ”は許し難い重大犯罪でありますので、ペナルティーとしてソノ後一定期間の活動禁止は妥当な処分かと思われます。

しかしながら、一部マスコミ報道で炎上している様に“数十年前の行為をほじくり返して、当該人物の全功績を否定する”のが、はたして妥当な“罪と罰”でしょーか?……………

 

 

『 British GQ / MARIO TESTINO  2015 』

 

『 VANITY FAIR / MARIO TESTINO  2014 』

 

 

マリオ テスティーノさんによる作品群は、例えどんな事があろうとも“翠玉の如く輝き続ける”と、信じて疑わない変態オッサンでありました。

 

 

『 MICK JAGGER and KEITH RICHARDS / MARIO TESTINO  2014 』

 

 

 

 

 

( 写真2〜5はネットから拝借。写真1、6〜14はマリオ テスティーノさんのTwitterから拝借。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝 ……

パリ時代、大変お世話になったファッション デザイナーの高田賢三さんは、70年代〜80年代パリコレのステージに“象”を登場させたり、我が国が世界に誇る“YMOさん”をライブ パフォーマンスに起用したりetc.“ドラマティック&スペクタクル”なステージングを展開して、パリコレに新しい価値観を誕生させました。

ソノ後、様々なデザイナーさんが“特異な発表会場”や“奇想天外な演出”によって、“モードの頂点”パリコレを舞台に、世界中から集まった観客を愉しませてくれたので御座います。

ところが90年代以降は、景気の変動やプレタポルテ(高級既製服)市場のポジショニング変化も相まって、パリコレの演出や発表されるコスチュームはより“シンプルでスタティック”な方向に舵を切りました。

 

率直に云えば“ネタ切れ状態”でもあったと思われますが、“トップモードの大御所”CHANELさんにとって、ネタはまだまだ尽きていない様であります(以下引用)。

 

 

【 グランパレが「シャネル」の森に! 2018秋冬プレタポルテコレクションに豪華セレブが集結 】( ELLE ONLINE )

現地時間3月6日(火)、「シャネル」が2018秋冬コレクションを発表。会場となったグランパレには、客席やランウェイ一面に枯葉が敷き詰められ、落葉した木立ちが連なる幻想的な森が出現。メゾンを象徴するモノトーンの世界観に落葉のような赤褐色や黄褐色、苔や針葉樹の葉のようなグリーン、樹皮のようなブラウンが加わり、さらに葉のモチーフのジュエリーボタンや木々の年輪のようなパターンなど、美しい自然のエレメンツを取り入れたコレクションでオーディエンスを“シャネルの森”の世界に誘った。( 2018年3月8日 )

 

 

『 CHANEL :  FALL and WINTER ( 2018 – 2019 ) Paris Collection 』

 

 

念の為に補足させて頂きますと、上記映像は決してブローニュの森で開催されたコレクションではありません。

グラン パレ(パリ8区にある大規模展示場)に、大量の枯葉や植物を用いて人工的に造った“CHANELの森”で御座います……………

 

 

 

 

ネイチャー感満載な会場で観る“王道トップモード”は、さぞかし圧巻で素晴らしい異次元トリップだったと容易に想像出来ます。

 

 

 

 

ところで、コノCHANELさんを1983年から35年間も率いておりますのは、かの有名なカール ラガーフェルド ( 本名 Karl Otto Lagerfeld : ドイツ , 1933〜 ) 先生。

ファッション デザイナーとしてCHANEL、FENDI、そして御自身のシグネチャー ブランドを統率する他に、写真家、音楽プロデューサーとしても超一流の正に“天才マルチ クリエイター”であります!

 

 

1954年、「 国際羊毛デザイン コンテスト 」“コート部門”で優勝した時のお姿。

1983年、CHLOÉ 在籍時のお姿。

 

 

実は、1971年にココ シャネル ( 本名 Gabrielle Bonheur Chanel : フランス , 1883〜1971 )さんが亡くなって以来、CHANELさんは長らく“冬の時代”が続きました。そんな名門を復活させたのがカール ラガーフェルド先生でありまして、“外国人が老舗メゾンを再生した”という業績に関しましては、当ブログ有名人である、トム フォードさん(元GUCCI)の先輩とも云える存在で御座います。

35年間もトップ メゾンのデザイナー(クリエイティブ ディレクター)を担当して、しかも常に“高評価並びに高セールス”を維持するのは、もはや人間業の領域を遥かに超越しており、カール ラガーフェルド先生は、謂わば“生きながら神格化されたブランド”なのであります。

 

 

最近のお姿(本年9月10日で御歳“85歳”)。

 

 

そんなカール ラガーフェルド先生。

当然ながら“名言(迷言)”のレパートリーも数多く、ココに極一部を御紹介させて頂きます。

 

✳「 私は生きるレーベルだ。名前は“レーベル フェルド”、ラガーフェルドではない。」

「 私を服に例えるならば白いシャツだ。何故なら“非の打ち所がない”から。」

「 ロングヘアは絶対に切らない。何故なら“私のロゴ”だから。」

 

 

 

 

因みに変態オッサンは、1985年に一度だけカール ラガーフェルド先生にお会いした経験があります。

当時はドイツ人の友人が何人もおりましたが、カール ラガーフェルド先生のキョーレツな第一印象は……………

_ “エッ、こんなドイツ人も居るの?” _

 

ソレが“何を意味するか”は、皆さんの御想像にお任せ致します。

 

 

 

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

 

 

絶賛迷走中 ……

今年も「 秋冬 パリコレクション 」のシーズンとなりました。

世界中からファッション関係者がパリに大集合して、“花の都”は更なる華やかさと熱気に包まれます。但し、人気レストランやBARがヒジョーに混雑致しますので、プライベートではチョット憂鬱になる時期でもありました。

そんな「 2018 – 2019 秋冬 パリコレクション 」に先立って開催された「 2018 – 2019 秋冬 ミラノコレクション 」で御座いますが、話題の中心はやはり“アノGUCCIさん”でありましたが(以下引用)……………

 

 

【 グッチ 2018-19年秋冬メンズコレクション – サイボーグ・ボーイはアブノーマルが基本 】( FASHION PRESS )

グッチ(GUCCI)の2018-19年秋冬メンズコレクションが、ミラノ・ファッション・ウィーク2日目の2018年2月21日(水)に発表された。今季もウィメンズとの合同ショーである。テーマは「サイボーグ」。

毎シーズンアミューズメントパークさながらの大胆な演出を見せてくれる、アレッサンドロ・ミケーレ率いるグッチ。今季のインビテーションはショー開始までの時を刻むカウントダウンタイマーだ。受け取った瞬間からショー開始直前までワクワクさせてくれるハッピーな演出とは裏腹に、会場で待ち受けていたのはちょっぴり怖い手術室のセット。ランウェイにはオペ台が設置され、ショー開始の合図は心拍を計る医療装置の音色だった。( 2018年2月22日 )

 

 

以前も当ブログで取り上げさせて頂きましたが、GUCCIさんと云えば、トム フォードさん時代(1994年〜2004年)の“セクシー&ラグジュアリー路線”にスッカリ馴染んでしまった私は、2015年からクリエイティブ ディレクターを務める、アレッサンドロ ミケーレ( ALESSANDRO MICHELE )さんの“キワモノ路線(?)”には、正直なところ“キョーレツな違和感”を感じます!

 

飽くまでも個人的見解で御座いますが……………

“ファッション”とは今現在(一時的)の流行であり、対してもっと長いスパンで捉えたのが“モード”だと勝手に解釈しております。つまり、“ファッション”は世界中で毎日生み出されては消えて行くムーブメントであり、“モード”は後世に足跡を残し、数十年後も何らかの形で語られるべきシークエンスだと考えます。

“ファッション”最大の魅力は、ストリートや身近なコミュニティーでも発生可能な点でありまして、故に世間に対しても影響力が甚大で御座いますが、GUCCIさんの様な所謂“トップモード”は、凡人には購入不可能なお値段であり、よって世間に対する直接的影響力が小さい代わりに、“モード界の重鎮”として、後世に引き継がれる“遺産の一部”だと言っても過言ではありません。

 

私が不思議でならないのは……………

はたして世界中の“GUCCIフリークさん(実際に購入されている方々)”は、素直に“アレッサンドロ ミケーレ ワールド”を歓迎しているのでしょーか?

 

 

自動車のFERRARIさん、時計のPATEK PHILIPPEさん、カメラのLEICAさんetc.世界中のあらゆる一流品(高級品)には、何にも変え難い特有の“香り”が存在致します。ソレは謂わば“崇高で神々しい香り”であって、ソノ“崇高で神々しい香り”が、人々を魅了して止まないのだと思います。

 

確かに“先進性と斬新さ”が、ファッション(モード)の重要ファクターであるのは間違いありませんが、現在のGUCCIさんから漂うのは“何とも言えない異臭”で御座います。

 

 

✳ 『 独断と偏見による総括 』

例えどんなに高名な批評家さんが高評価しようとも、例えどんなにお金があろうとも、誠に失礼ながら“現在のGUCCIさんだけは着たくない”。

と、心に強く刻まれてしまった変態オッサンでありました……………

 

 

 

 

( 写真は全てネットから拝借。)

上等でスリリングな日常 ……

当ブログに於いては、“イタリア老舗ブランドを大改革したアメリカ人”としてヒジョーに有名なトム フォードさん( 本名 : Thomas Carlyle Ford  , 1961〜 )。

改めて雑にオサライをさせて頂きますと……………

1988年「 ペリー エリス ( Perry Ellis ) 」でファッション デザイナー としてデビューしたトム フォードさんは、1990年にニューヨークからミラノへ移って「 GUCCI 」に入社し、1994年「 GUCCI 」のクリエイティブ ディレクター(総監督)に就任。“オバサン向け老舗バッグ ブランド”だった同社を、世界有数の“トップ モード企業”に昇華させるという偉業を達成。

加えて、ソノ後10年間で“売り上げ約15倍アップ”を達成し、クリエイティブとマネージメントの両面で大成功を収めた、真の“ファッション ビジネス界レジェンド”で御座います。しかも2000年以降は、イブ サンローランを含むグッチ グループの“トータル クリエイティブ ディレクター”に就任。

2004年「 GUCCI 」CEOだったドメニコ デソーレさんと仲良く辞任。翌2005年にシグネチャー ブランド及び株式会社「 トム フォード 」を設立……………

と、ここまでは“単なるスーパー デザイナー”のサクセス ストーリーでありますが、トム フォードさんが“単なるスーパー デザイナー”と違うのは、シグネチャー ブランド設立と同時に何と“映画制作会社”「 フェイド トゥ ブラック 」も設立。監督デビュー作品『 シングルマン ( A Single Man )  / 原作 : クリストファー イシャーウッド  2009 』は、ヴェネツィア国際映画祭etc.で数多くの賞を受賞致しました。

 

 

 

そんな“宇宙No.1スーパー クリエイター”トム フォードさんが、監督並びに脚本を手掛けた第2弾作品『 ノクターナル アニマルズ ( Nocturnal Animals ) / 原作 : オースティン ライト  2016 』が現在我が国で公開中で御座います(以下引用)。

 

【 世界トップデザイナーによる監督最新作『ノクターナル・アニマルズ』、その着こなしを最速チェック! 】( dmenu映画 )

観客のイメージを左右しない“無印”の着こなし

グッチグループのクリエイティブ・ディレクターとして活躍し、ファッションデザイナーから映画監督へ華麗な転身を遂げたトム・フォードが、7年ぶりに発表した監督第2作『ノクターナル・アニマルズ』は、昨年のヴェネチア映画祭審査員グランプリを筆頭に多くの映画賞を受賞。現実の世界で暮らすヒロインが、小説に描かれた虚構の物語に没頭していくスリリングな構成もさることながら、映画の見どころは、ずばりファッション。今回は、コリン・ファース演じる大学教授のために自ら得意のブラックスーツをカスタマイズした前作『シングルマン』とは違い、トム・フォード・ブランドを一切封印しているのが注目点だ。( 2017年10月31日 )

 

 

“ファッションありきのヴィジュアル作品”ではなく、飽くまでも“日常のドラマ”として描く事に重点を置きながらも、かつスタイリッシュでスリリングな作品に仕上げるなんて荒技は、コノ地球上でトム フォードさん以外の誰にも決して真似出来ないのでは?つまり、一番の得意技である“自らデザインした衣装”を封印したばかりか、他の有名ブランドも殆ど使用せず、それでいて“ファッションが見どころ”の逸品に仕上げた手腕は、正に“トム フォード流”の一言に尽きると思います。

 

『ノクターナル・アニマルズ』 TOHOシネマズ シャンテ他、全国ロードショー上映中(C)Universal Pictures

 

 

ところで、変態オッサンがヘアメイクだった1996年のお話。

ブック(自身の作品ポートフォリオ)を持ってニューヨークのエージェントを廻りましたが、ソノ際にブッカーさんから「トム フォードを知っているかい?」と何度も聞かれた経験がありました。

今にして思えば、丁度トム フォードさんが「GUCCI 」のクリエイティブ ディレクターとして話題になっていた時期であり、“イタリアで奮闘中のアメリカ人を応援しよーゼ”的な、誠にハートウォーミングな雰囲気に包まれていた気が致します。

 

⬆️ ディレクター ビュー ファインダーを覗いて、熱心にフレーミング(構図) チェックをする“トム フォード監督”。

う〜〜ん、カッコ良過ぎ……………

 

因みに“テキサス出身のお方”は、やはり“テンガロンハット好き”の様で御座います!

 

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

トップモード、勇気ある試みなれど ……

元々はイタリアの老舗バッグ ブランド(但しオバサン御用達)を、1994年にクリエイティブ ディレクターに就任した“アメリカ人”トム フォードさんが、世界の超一流トップモードに昇華させたGUCCIというブランド。

ソノ後はクリエイティブ ディレクター(総監督)が、アレッサンドラ ファキネッティさん(トム フォードさん後任の重圧から1年で辞任)〜フリーダ ジャンニーニさん〜そして現在のアレッサンドロ ミケーレさんと交代しながら、ソレに伴ってブランド イメージも若干変化致しました。例えるならば、ギタリスト(又はヴォーカリスト)が代わる度に、音楽性がマイナー チェンジし続けたロック バンドと同様かと思われます……………

 

本日は先ず、有名ファッション フォトグラファーであるグレン ルックフォードさん( Glen Luchford : イギリス , 1968〜 )が監督された、『 GUCCI Fall & Winter Campaign / Glen Luchford  2017 』を御覧下さい。

 

 

今回のモチーフとなりましたのは、1966年にアメリカでTVシリーズとしてスタートした『 STAR TREK ( スター トレック ) 』で御座います。我が国では『 宇宙大作戦 』として放送され、実は私もケッコー夢中になったのを覚えております。当時の私(小学校低学年)にとっては、何はともあれ“SFと云えば即ち『 宇宙大作戦 』”でありました。

そんな上記プロモーション ムービーは、確かに“広告として斬新かつインパクト大”なのは間違いなく、ソノ点だけを考えても秀逸なキャンペーン ビジュアルで御座いますが、私が気になるのは“GUCCIさんの様な高級トップモード ブランド”が、こんなポップでキッチュなキャンペーンを展開する事に対する、言ってみれば“イメージング対価”なので御座います……………

 

 

極めて簡単に言うならば、もしFerrariさんやRolls-Royceさんが、“アメリカン コミック”や“ジャパニーズ アニメ”をモチーフにしたワールド キャンペーンを展開した場合、“世界中のユーザーさん並びに熱狂的な支持者さん”が、はたして好意的な捉え方が出来るか否か?的な問題であります。

しかも、現クリエイティブ ディレクターであるアレッサンドロ ミケーレさんは、過去にも“パチンコ屋さん”や“デコレーション トラック”をフィーチャーし東京で撮影された、何ともエキゾチックなプロモーション ムービーを発表して、モード界のみならず多方面で話題になったお方で御座います。

つまりGUCCIさんには、今後“キワモノ路線”が定着してしまう可能性が……………

 

 

1986年3月、パリの経験談で御座います。

私は山本耀司さん( Yohji Yamamoto , 1943〜 )のコレクションを拝観しておりました。ステージ前半で唐突に音楽がストップしてしまい、以降は全く無音の“異次元空間”を、男女のモデルさんがランウェイを“出て来ては帰る”を繰り返す一種異様なトランス状態に。

ステージ終了後にお聞きした話によれば、サウンド システムが故障して音楽再生が不可能になってしまい、とっさの判断でステージの続行を決断したとの事でありました(本当のアクシデント)。

私はてっきり、山本耀司さんが綿密に計算した“無音パフォーマンス”だと思っておりました。何故ならば無音状態によって、観客の五感はコスチュームのシルエットや質感により集中出来て、通常のコレクション形式よりも、コスチュームの美しさ&プロポーションが一層際立った結果に……………

 

結局のところ、コスチューム自体に“キョーレツな力強さ”が存在するならば、余計なファクターは一切必要ないので御座います!

 

 

そこでGUCCIさんに於れましては、“キワモノ路線”から“王道路線”への軌道修正を、是非とも御検討頂きたく願う変態オッサンでありました。

 

( 画像は全てネットから拝借。)