脱力系ヴォーカリスト世界一 ……

❇️ 1985年、パリ。

TV文化に於いて謂わば“発展途上国”であったフランスは、正直なところ興味深いTVプログラムが皆無であり、私は主にアメリカのMTVをフランスで独自に編集した“MTV フランス編集版”を観ておりましたが、圧倒的な人気を誇るビデオ クリップが存在致しました……………

ロバート パーマーさんの「 Addicted To Love ( 邦題 : 恋におぼれて ) 」で御座います。


『 Addicted To Love / Robert Palmer  ( 1985 ) 』


今にして思えば、マイケル ジャクソンさんやデュラン デュランさんetc.“制作費ン億円”の豪華絢爛ビデオ クリップ全盛期。むしろ“チープ&プリミティブ”なロバート パーマーさんのビデオ クリップは極めて新鮮だった上に、当時のCHANEL ビューティー広告と“ヘアメイク イメージが似ていた”ので、フランスで大ブレイクしたのだと思われます……………


ロバート パーマーさん ( 本名 : Robert Allen Palmer , イギリス , 1949〜2003 )

ロバート パーマーさんと云えば、「 Addicted To Love 」 ( 後に全米シングルチャート1位獲得の大ヒット ) と同時期に、パワー ステーション ( デュラン デュラン並びにシックのメンバーも参加 ) での活動が有名でありますので、“パワー ステーションのロバート パーマー”として御存知の方も多いかと。

そんなロバート パーマーさん。一体何がどの様に凄いのか……………

❇️ 1 ) “古き良き時代”のプレイボーイ感満載。

ソノ点に関しましてはブライアン フェリーさん ( ロキシー ミュージック ) と双璧で御座います。

ブライアン フェリーさん ( Bryan Ferry , イギリス , 1945〜 )

❇️ 2 ) “脱力感”。

1987年には何とグラミー賞の「 最優秀男性ロック ヴォーカリスト賞 」を獲得しており、誠にソウルフルな“熱い歌唱力”をお持ちながら、決してソノ“武器”を使う事なく、ひたすら“ポップでカジュアル(時にトロピカル?)”なヴォーカル スタイルを徹底。

❇️ 3 ) “スタイリッシュ”。

ステージやビデオ クリップでは主にアルマーニ製スーツを愛用。しかもタイドアップ(ネクタイ着用)で極めてダンディー。

因みに、「 Addicted To Love 」のワールド ビッグヒットで気を良くしたロバート パーマーさんが、次に放ったシングル曲のビデオ クリップが……………

『 I Didn’t Mean To Turn You On / Robert  Palmer  ( 1985 ) 』

❇️ 前回と“まんま同じ”じゃねーの!

しかしながら、“二匹目のドジョウ”を狙える程に音楽業界は甘くありませんので、当然コノ曲は“大ハズレ”に終わると誰もが予想しましたが、意外にも“全米シングルチャート2位”と大健闘致しました。

まるで“コントの様に同じネタ”を使い回す点も、“元祖 脱力ヴォーカリスト”のロバート パーマーさんらしい魅力で御座います。

❇️ 2003年9月26日、パリ。

15歳年下のガールフレンドとバカンス中、心臓発作により若干54歳で他界されたロバート パーマーさん。

“プレイボーイ”を貫いた人生でありました。

私がロバート パーマーさんを知ったのがパリで、 ロバート パーマーさんが最期を迎えられたのもパリ。

皮肉な運命を感じます……………


代表作品『 Riptide / Robert Palmer  ( 1985 ) 』

ベストアルバム『 Best of Both Worlds: Anthology 1974-2001 / Robert Palmer  ( 2002 ) 』

❇️ ところで、変態オッサンは考えます。

今の時代だからこそ、“実力派 脱力ヴォーカリスト”がロバート パーマーさんの楽曲をカバーしたり、「 Addicted To Love 」のビデオ クリップを“オマージュとしてパロディ化”したらヒジョーに面白いのでは?……………

1980年代ロックを未体験の世代にとっては、“クイーン現象”に通じる“カッコ良さ”を見出せる気が致します。

例えば、我が国を代表する“プレイボーイ系ヴォーカリスト”横山 剣 さん ( クレージーケンバンド ) なんぞ適任だと思います。

横山 剣さん ( Ken Yokoyama , 神奈川県出身 , 1960〜 )

( 画像は全てネットから拝借。)


迷えるニューヨークのベルギー人 ……

当ブログでは今年の9月、ラフ シモンズさん ( 元 Christian Dior ) によるCalvin Kleinコレクションを取り上げさせて頂きました。

“ヨーロッパ装飾文化”で育ったベルギー人のラフ シモンズさんが、“アメリカ機能美の最高峰”Calvin Kleinのチーフ クリエイティブ オフィサーに就任する際には、多くの葛藤と苦悩があったのでは?と推測されますが、アメリカ映画をモチーフにした斬新なコレクションを展開し、世界中の“ラフ シモンズ フリーク”を一安心させてくれました。

確かにソレは“新天地での意気込み”を充分に感じさせる、誠に素晴らしい出来栄えでありましたが、正直なところ、ラフ シモンズさん御自身が完全には吹っ切れておらず、どこか“消化不良に見えた”のがヒジョーに気になりました。

 

加えて最近、アメリカ人メル友から「ラフ シモンズのKalvin Kleinは、アーティスティック過ぎて世間の評判は芳しくない。」と聞いてチョット心配しておりましたら(以下引用)……………

 

 

【 ラフ・シモンズへの高評価が一転 不調「カルバン・クライン」の立て直し策をPVHが発表 】( WWD JAPAN )

「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」の不調を受け、同ブランドを擁するPVHコープ(PVH CORP)のエマニュエル・キリコ(Emanuel Chirico)会長兼最高経営責任者(CEO)が立て直し策を発表した。2018年8~10月期決算において、「カルバン・クライン」は売上高こそ前年同期比2.1%増の9億6300万ドル(約1088億円)となったものの、既存店の売り上げがおよそ2%下落しており、利払い前・税引き前当期利益(EBIT)は同14.7%減の1億2100万ドル(約136億円)だった。

キリコCEOは、ラフ・シモンズ(Raf Simons)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーによるブランド刷新が「メーン顧客層にとってファッション的に先鋭的すぎ、価格帯も高すぎた」とし、「現在そうした間違いの修正に取り組んでいる。19年からは、『カルバン・クライン ジーンズ(CALVIN KLEIN JEANS)』でより商業的かつ顧客に合った製品を提供したい。今後はブランドのDNAを重視し、『カルバン・クライン』らしさを取り戻す。19年の春季で調整し、秋季には完全に再生させる」と語った。( 2018年12月3日 )

 

 

❇️ 因みに「ラフ シモンズが、2019年限りでCalvin Kleinを去る可能性は限りなく100%に近い。」by アメリカ某 ファッション ジャーナリスト。

 

ラフ シモンズさんと云えば“完璧主義者”で、コレクション制作中やショー当日は極めて“人当たりが厳しい”ので知られますが、ショーが終わった途端に“号泣”する事でも有名であります。つまりは“ガラス細工”の様に繊細で、かつ不器用な“真のクリエイター”なのだと思われます。

そんなデザイナーが、御自身のシグネチャー ブランド以外に“大手老舗メゾン”の主任デザイナーを兼任するのは、極めて“環境的に困難”な気が致します……………

 

例えば、“大手老舗メゾン”CHANELの主任デザイナーを35年も続けていらっしゃる、御存知カール ラガーフェルド大先生。

 

 

カール ラガーフェルド大先生 ( 本名 : Karl Otto Lagerfeld , ドイツ , 1933〜 )

 

 

カール ラガーフェルド大先生が手掛けるCHANEL、FENDI、Chloé、etc.はトップ モードかつ“コンサバティブなライン”を主流としており、カール ラガーフェルド大先生“本来の芸風”とほぼ一致で御座います。

 

ところが、ラフ シモンズさん“本来の芸風”は(以下参照)……………

 

 

『 Raf Simons ー Spring / Summer 2019 ー Men’s Collection in Paris 』

 

 

余りにも“アーティスティック”で個性的なのであります。

 

 

『 Raf Simons ー Spring / Summer 2019 ー Men’s Collection in Paris 』

 

 

❇️ そこで、変態オッサンの結論。

ラフ シモンズさんに於かれましては、Calvin Kleinで契約満了迄“それなりに頑張って”頂き、以降はヨーロッパに戻り“Raf Simons(御自身のシグネチャー ブランド)”に御注力されるのをオススメ致します。

 

何故ならば……………

“Raf Simons”でのパフォーマンスは、Calvin Kleinよりも遥かに“エネルギッシュ&エモーショナル”であり、何よりも“ラフ シモンズさんらしい”と感じるからで御座います!

 

 

https://youtu.be/Q45iJiFK5wU

『 Raf Simons ー Spring / Summer 2019 ー Men’s Collection in Paris 』

 

 

 

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝 ……

パリ時代、大変お世話になったファッション デザイナーの高田賢三さんは、70年代〜80年代パリコレのステージに“象”を登場させたり、我が国が世界に誇る“YMOさん”をライブ パフォーマンスに起用したりetc.“ドラマティック&スペクタクル”なステージングを展開して、パリコレに新しい価値観を誕生させました。

ソノ後、様々なデザイナーさんが“特異な発表会場”や“奇想天外な演出”によって、“モードの頂点”パリコレを舞台に、世界中から集まった観客を愉しませてくれたので御座います。

ところが90年代以降は、景気の変動やプレタポルテ(高級既製服)市場のポジショニング変化も相まって、パリコレの演出や発表されるコスチュームはより“シンプルでスタティック”な方向に舵を切りました。

 

率直に云えば“ネタ切れ状態”でもあったと思われますが、“トップモードの大御所”CHANELさんにとって、ネタはまだまだ尽きていない様であります(以下引用)。

 

 

【 グランパレが「シャネル」の森に! 2018秋冬プレタポルテコレクションに豪華セレブが集結 】( ELLE ONLINE )

現地時間3月6日(火)、「シャネル」が2018秋冬コレクションを発表。会場となったグランパレには、客席やランウェイ一面に枯葉が敷き詰められ、落葉した木立ちが連なる幻想的な森が出現。メゾンを象徴するモノトーンの世界観に落葉のような赤褐色や黄褐色、苔や針葉樹の葉のようなグリーン、樹皮のようなブラウンが加わり、さらに葉のモチーフのジュエリーボタンや木々の年輪のようなパターンなど、美しい自然のエレメンツを取り入れたコレクションでオーディエンスを“シャネルの森”の世界に誘った。( 2018年3月8日 )

 

 

『 CHANEL :  FALL and WINTER ( 2018 – 2019 ) Paris Collection 』

 

 

念の為に補足させて頂きますと、上記映像は決してブローニュの森で開催されたコレクションではありません。

グラン パレ(パリ8区にある大規模展示場)に、大量の枯葉や植物を用いて人工的に造った“CHANELの森”で御座います……………

 

 

 

 

ネイチャー感満載な会場で観る“王道トップモード”は、さぞかし圧巻で素晴らしい異次元トリップだったと容易に想像出来ます。

 

 

 

 

ところで、コノCHANELさんを1983年から35年間も率いておりますのは、かの有名なカール ラガーフェルド ( 本名 Karl Otto Lagerfeld : ドイツ , 1933〜 ) 先生。

ファッション デザイナーとしてCHANEL、FENDI、そして御自身のシグネチャー ブランドを統率する他に、写真家、音楽プロデューサーとしても超一流の正に“天才マルチ クリエイター”であります!

 

 

1954年、「 国際羊毛デザイン コンテスト 」“コート部門”で優勝した時のお姿。

1983年、CHLOÉ 在籍時のお姿。

 

 

実は、1971年にココ シャネル ( 本名 Gabrielle Bonheur Chanel : フランス , 1883〜1971 )さんが亡くなって以来、CHANELさんは長らく“冬の時代”が続きました。そんな名門を復活させたのがカール ラガーフェルド先生でありまして、“外国人が老舗メゾンを再生した”という業績に関しましては、当ブログ有名人である、トム フォードさん(元GUCCI)の先輩とも云える存在で御座います。

35年間もトップ メゾンのデザイナー(クリエイティブ ディレクター)を担当して、しかも常に“高評価並びに高セールス”を維持するのは、もはや人間業の領域を遥かに超越しており、カール ラガーフェルド先生は、謂わば“生きながら神格化されたブランド”なのであります。

 

 

最近のお姿(本年9月10日で御歳“85歳”)。

 

 

そんなカール ラガーフェルド先生。

当然ながら“名言(迷言)”のレパートリーも数多く、ココに極一部を御紹介させて頂きます。

 

✳「 私は生きるレーベルだ。名前は“レーベル フェルド”、ラガーフェルドではない。」

「 私を服に例えるならば白いシャツだ。何故なら“非の打ち所がない”から。」

「 ロングヘアは絶対に切らない。何故なら“私のロゴ”だから。」

 

 

 

 

因みに変態オッサンは、1985年に一度だけカール ラガーフェルド先生にお会いした経験があります。

当時はドイツ人の友人が何人もおりましたが、カール ラガーフェルド先生のキョーレツな第一印象は……………

_ “エッ、こんなドイツ人も居るの?” _

 

ソレが“何を意味するか”は、皆さんの御想像にお任せ致します。

 

 

 

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

 

 

広告写真の行く末 ……

旧ブログで以前、ヨーロッパ(特にフランス)で過敏になりつつある“CGリタッチによる広告規制”について取り上げましたら、男女それぞれの立場から様々な御意見を頂き誠に有難う御座いました。

 

ソノ際に問題となっておりましたのは……………

✳ 1 ) 「CGリタッチによって肌を美化した化粧品広告は、消費者に“使用すると誰もが美しい肌になる”との誤解を与えるもので、詐欺的要素が強く望ましくない。」

✳ 2 ) 「CGリタッチによって体型を補正したファッション広告は、消費者に無理なダイエットを促し、“健康被害に繋がる懸念がある”ので望ましくない。」

ソノ時点ではフランスを中心とした風潮でありましたが、つい先日“風潮ではなく法律として制定”されてしまい、話は更に複雑な様相に突入致しました(以下引用)。

 

 

【 商業写真でモデルの体型を加工したら…フランスで新法律が施行 】( HUFFPOST )

商業写真のモデルの体型を、フォトショップなどの写真加工ソフトを用いて修正した場合に、「photographie retouchée(修正写真)」というマークをつけることを義務付ける法律が、フランスで施行された。体型を細くしたり、肉付けしたりといった加工に適用される。「France24」など複数のメディアが報じた。

法案自体は2016年1月に議会で可決されていたが、10月1日から施行されることになった。違反した場合には、最大3万7500ユーロ(日本円で約500万円)の罰金が課されるという。フランス政府は、子どもたちや若者が晒されている”現実離れしたボディイメージ”を少しでも減らすための法律施行だとしている。( 2017年10月2日 )

 

 

私は、1982年〜1999年迄の17年間ヘアメイクを仕事としておりましたが、晩年は主にCMや広告が中心でありまして、化粧品会社さんのビューティー ショットも数多くやらせて頂きました。素人見には“一切手を加えていない写真”に見えても、実際には“眼球の白目をより白くする”とか、“肌をより滑らかにきめ細かくする”etc.の修正技術(CGリタッチ)は、1990年代既にポピュラーなテクニックとして採用されておりました。私の記憶によればアドバタイジング フォトの約80%、エディトリアル フォトの約40%がCGリタッチされていた様に思います。

そーやって創造された画像は、物理的には確かに“実態と違う付加価値”を伴って世間に露出する訳でありますが、「◯社の広告はいつも極端に写真が修正されているので、◯社の商品は信用出来ない。」と決めるべきは消費者側でありますので、はたして法律で規制するべき事案でしょーか?……………

 

例えば、ある画家が風景画を描いていると致します。

“電柱と電線が気になったので省略して描いた”としても、ソレこそが“画家としての個人センス”であり、クリエイターとして極めて真っ当な芸術表現だと考えます。ですから上記フランス案件に関しましては、商品がもし“医薬品(又は医薬部外品)の類い”であるならば理解出来ますが、ファッション性の高い商品に該当する今回の規制は、“クリエイティビティー”や“イマジネーション”といった広告の“最重要要素”を著しく削いでしまい、広告(並びに芸術表現)に大きな“足枷”を掛けてしまうのは間違いありません。

 

 

『 CHANEL No.5 / Photo : Baz Luhrmann , Model : Nicole Kidman  2005 』

『 CHANEL No.5 L’EAU / Photo : Karim Sadlit , Model : Lily-Rose Depp 2016 』

『 Dior DIORSHOW MASCARA / Photo : Craig McDean , Model : Ondria Hardin 』

『 LANCOME / Photo : Charles Helleu , Model : Emma Watson  2013 』

 

 

特筆すべきはコレが、“モードの本家フランス”主導で行われている規制である点。つまりフランスは、もはや“広告表現に於いて先進国から脱落”したも同然であり、よってフランス広告の魅力は、今後一気に急降下するかと思われます。

因みに、私のパリ在住経験から言わせて頂けば、フランスという国は“決定事項がエスカレートするお国柄”であります。ですからCGリタッチに始まった規制が、いつの間にか“商業モデルの美容整形禁止”に発展して、そして挙げ句の果てには「 整形インターポール 」的な組織が誕生し、“整形疑惑”のあるモデルさんや女優さんの情報管理を行うのでは?と、ヒジョーに心配になってしまった変態オッサンで御座います!

但しフランスは、“決定事項が長続きしないお国柄”でもありますが……………

 

 

『 SAINT LAURENT / Photo : Hedi Sliman , Model : Freja Beha Erichsen  2013 』

『 Calvin Klein underwear / Photo : Mario Sorrenti , Model : Christy Tarlington  2013 』

 

 

ところで、『 CHANEL No.5 L’EAU 』モデルのLily-Rose Depp(リリー ローズ デップ)さんは、かのジョニー デップさんとバネッサ パラディさん“元御夫婦”のお嬢様であり、何と“親子二代で天下のCHANELミューズ就任”という偉業を成し遂げました。

“親に迷惑をかける二世タレントさんが多い”我が国に比べると、“何かが決定的に違う”のかも知れません……………

 

 

✳ 今回使用させて頂いた写真は、飽くまでも“美しい広告写真の一例”として御紹介したものであり、決して“修正写真の一例”では御座いません。

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)