不便のススメ ……

1988年頃のお話。

イギリスのファッション誌「 i – D 」が、東京のストリート ショットをメインとした“東京特集”を企画しました。当時、私が御世話になっていた某 有名写真家さんから、光栄にもヘアメイクとしてのオファーを戴いたのですが……………

残念ながら、本国編集部と日本側スタッフの間で“バジェット(撮影総予算)”が折り合わず、結局のところ企画自体が消滅してしまいました。

ちょうど欧米の“ジャパン ブーム”が一段落して、色々な意味で“日本の真価”が問われていた時代でしたから、もしもファッションを通して“本当の日本”を打ち出す事が出来たのならば、ソノ後の数年間は“欧米から見たジャパン”が違っていたのでは?と考えると、今でもヒジョーに残念でなりません。

ところで「 i – D 」は、「 UK VOGUE 」の若手アート ディレクターだった テリー ジョーンズ ( Terry Jones ) さんが、1980年に創刊したファッション誌であります(有名ファッション誌の中では後発)。どちらかと云えば、ファッション(モード)よりも“カルチャー”にフォーカスした“最先端情報誌”的要素が強く、明らかに「 VOGUE 」「 ELLE 」「 Marie Claire 」etc.とは異質な“先進性”をウリとしております(カヴァーショットではモデルがいつもウインク)。

実はそんな「 i-D 」さんが、2017年に“次世代注目フォトグラファー”として紹介していた方々の“ある共通点”が、2年後の現在“極めて身近な流行”に繋がっているので御座います……………

『 i-D Meets : Next Gen Photographers / 2017 』

“先進性の「 I-D 」”がチョイスしたフォトグラファーの特徴は、共に“フィルム カメラ”をメインとしている事であります!

当ブログ“登場回数No.1のフォトグラファー”ブルース ウェーバー先生は、未だに“フィルム カメラ”をメインに使用されておりますし、多くの映画は未だにフィルムで撮影されている現実。プロフェッショナルにとっては、“求める世界観”を具現化する為に“古い機材”を用いるのは良くあるお話。

ところが昨今、“フィルム時代”を全く知らない世代の間で、“フィルム カメラ”が密かなブーム。

例えば……………

❇️ 唐田えりかさん ( Erika Karata : 女優 , 千葉県出身 , 1997〜 ) の作品。

❇️ 芳根京子さん ( Kyoko Yoshine : 女優 , 東京都出身 , 1997〜 ) の作品。

上記のお二人は、我が国が世界に誇る“若手本格派女優”の代表格でもあり、ヨーロッパ人メル友にもケッコーな知名度を誇ります(因みに芳根京子さんは、北海道ローカルのドラマやCMに出演されているので、“北海道出身”だと思われがちですが“東京出身”で御座います)。

そんなお二人がハマっている“フィルム カメラ”という世界。

私も知人から度々「息子がフィルム カメラを欲しがっているので、オススメ機種を教えて欲しい。」と訊かれますが、何故今、“フィルム カメラ”は若い世代を魅了するのでしょーか?……………

美しい写真を“最も簡単に撮影するツール”は、間違いなくスマートフォンのカメラであります。にも拘らず、わざわざフィルム カメラで撮影するのは、謂わば“便利過ぎるツール”に対して、何かしらの不満を感じているからだと思われます。

つまり、フィルム カメラで撮影して、カメラ屋さんに現像依頼するのも、私の様にフルサイズ ミラーレス機にオールド レンズを装着するのも、敢えて“不便な思いをして趣味性を高める”、ある種の“サディスティック行為”なのかも知れません。

ソノ快感故に、“オールドレンズ沼”から抜け出せない変態オッサンでありますが、「 YASHIKA – CONTAX 」さんの“ZEISSレンズ”が欲しいなぁと……………

( 画像1、12、13は自身のInstagramより。画像2〜6、9はネットから拝借。画像7、8は唐田えりかさんのInstagram、画像10、11は芳根京子さんのInstagramから拝借。)