職人的音楽写真家 ……

1900年代前半のファッション フォトグラフに於いて、革新的技法を用いて偉大な足跡を残した写真家セシル ビートンさん ( 本名 : Cecil Walter Hardy Beaton , イギリス , 1904〜1980 ) は、同時にイギリス王室お抱えの「 宮廷写真家 」としても有名であり(後に“大英帝国勲章”受章)、写真に興味をお持ちの方なら「 宮廷写真家 」と云えば、即ちセシル ビートンさんを思い浮かべるかと思われます。

本来、肩書きやキャッチフレーズは“特定ジャンルに長けたスペシャリスト”を意味致します。つまり肩書きで呼ばれるクリエイターには、どこか職人的で特別な魅力を兼ね備えた方が多く、肩書きは、クリエイターを知る得る重要なツールの一つだと考えます……………

 

鋤田 正義さんは、正に“我が国が世界に誇る”「 音楽写真家 」で御座います。

 

 

鋤田 正義さん ( スキタ マサヨシ : 福岡県直方市出身 , 1938〜 )

 

 

鋤田 正義さんは1970年〜80年代に掛けて、主にイギリス ロックスターのジャケット写真に代表される“ポートレート フォト”で、御自身のスタイルと評価を確立されました。何気ない表情ながらもヒューマニズム溢れる独特の作風は、世界中のトップ ミュージシャンから圧倒的に支持されましたが、故 デヴィッド ボウイさんとの交友は特に有名であり、デヴィッド ボウイさんを被写体とした作品は、ロック ファンにとっての“マスターピース”となっております。

 

因みに、変態オッサンにとってデヴィッド ボウイさんは、「 シリアス ムーンライト ツアー 1983 」横浜公演で一度拝観しただけでありますが、1993年に再婚されたイマン アブドゥルマンドさん(スーパー モデル)には、私がヘアメイク時代、パリコレで色々と教えて頂いた経験があります……………

よって身勝手に“縁”を感じておりますので、本日は鋤田 正義さん作品群の中から、デヴィッド ボウイさん関連作品の一部を紹介させて頂きます。

 

 

『 DAVID BOWIE , HEATHEN , 2002 』

『 DAVID BOWIE , A DAY IN KYOTO 4 ー TELEPHONE BOX , 1980 』

『 DAVID BOWIE , JUST FOR ONE DAY , 1977 』

『 DAVID BOWIE , A DAY IN KYOTO 2 ー HANKYU TRAIN , 1980 』

『 DAVID BOWIE , JUST WATCH ME NOW , 1978 』

『 DAVID BOWIE , HANG ON YOUR SELF , 1973 』

 

 

上記作品の特徴として、単なる肖像写真ではなく“信頼関係が確立されたフォト セッション”である点が挙げられます。

暖かいポートレート フォトや臨場感まで伝わって来るドキュメント フォトは、まるでデヴィッド ボウイさんのお宅にて、“プライベート フォト アルバム”を拝見している気分になりますし、お二人が極めて強い信頼関係で結ばれていたのは、これらの作品からも容易に想像出来ます。

 

更には、お二人の強い信頼関係を証明する誠にユーモラスな実例も……………

 

 

『 The Next Day / DAVID BOWIE  2013 』

 

 

デヴィッド ボウイさんが実に10年のブランクを経て、2013年1月8日(デヴィッド ボウイさん66歳の誕生日)に突如リリースが発表された本アルバムは、レコーディング スタッフ、スタジオに出入りしていたフード サービスまでもが、“他言無用誓約書”にサインさせられた事が話題となりました。

そんな“極秘プロジェクト”のジャケットに採用されたのが、本日のアイキャッチ画像でも使わせて頂いたデヴィッド ボウイさん代表作品、『 HEROES / DAVID BOWIE  1977 』by 鋤田 正義さんの何と“セルフ パロディ”で御座いました!

但し、肝心のサウンドは“ライブ的でヒジョーに軽い音”なので、正直なところガッカリでありました。しかしながら、ジャケット写真を含めての“プロモーション戦略”には改めて脱帽……………

 

ところで、“鋤田 正義さんワールド”を覗けるドキュメンタリー映画が、ジャパンで現在公開中であります。

 

 

『 SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬 / 監督 : 相原裕美  2018 』

( C ) 「 SUKITA 」パートナーズ 2018

【 新宿武蔵野館(新宿)、YEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿)にて、2018年5月28日(月曜日)迄公開中 】

 

 

鋤田 正義さんのオリジナル プリントは、当然ながら立派なお値段で御座いますので(特にニューヨーク、ロンドンで高騰中)、せめて映画なんぞ如何でしょーか?……………

 

 

 

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

 

それでも写真は真実を写し続ける ……

“超有名報道(ドキュメント)写真家”のロバート キャパ (  本名 : Friedmann Endre Erno / ハンガリー , 1913〜1954 )さんによる、余りにも有名な出世作品『 崩れ落ちる兵士 ( Falling Soldier ) 1936 』……………

 

 

“銃弾を受けた瞬間の兵士”を捉えた誠にショッキングな本作品は、絵画の『 ゲルニカ / ピカソ 1937 』と並んで、長年に渡って“反ファシズム シンボル”として輝き続けました。正に“歴史に残るアイコン フォト”と呼んでも差し支えのない逸品で御座いましたが……………

コレが何と“コケそーになっただけの訓練兵士”を撮影したモノであり、撮影者も実はロバート キャパさんではなく、同行したゲルダ タローさん(当時の恋人)が撮影した作品だったという“真事実”が最近になって発覚。

かと言って、ロバート キャパさん全ての作品がコノ様な“捏造作品”ではありません。他にも素晴らしい作品を数多く残していらっしゃいますので、本件が即ち、ロバート キャパさん自体の評価を著しく下げるファクターとはなり得ないと思われます。但し、約70年間も写真ファンのみならず世界中の報道関係者を騙し続けたのは、はたして“クリエイター”として如何なものかと……………

 

因みに私がヘアメイク時代、大変お世話になった某有名写真家さんは、かつて「オレは元々“報道写真家”だったが、報道写真やドキュメント写真でさえ“ある種の演出”が加えられている場合がある。写真は“真実を写す”と書くけれども、実際には“いつも真実を写しているとは限らない”という前提で鑑賞するべし。」と教えて下さいました。

ヘアメイク時代は主にファッション フォトやアドバタイジング(広告) フォトに携わった私は、廃業して“早19年”も経過致しましたが、ファッション フォト並びにアドバタイジング フォトを、未だに客観視して純粋に楽しむのが苦手であります。故に報道写真、ドキュメント写真、静物写真etc.を注視する機会が増えました。

 

ハリー ベンソン ( 本名 : Harry James Benson / スコットランド , 1929〜 )さんはニューヨーク在住の“超ベテラン報道(ドキュメント)写真家”でありますが、有名ミュージシャン、スポーツ選手、俳優等所謂セレブの方々を被写体とした作品もケッコー有名であり、謂わば“報道(ドキュメント)を主軸としたオールラウンダー フォトグラファー”で御座います(以下引用)。

 

 

【 20世紀から21世紀まで、時代をとらえた16の写真 】( Buzz Feed NEWS )
ビートルズから歴代米大統領まで、88歳の写真家ハリー・ベンソンがとらえた世界

1950年代以降、写真家ハリー・ベンソンは、近代史における数々の歴史的瞬間と多くの重要人物を写真に収めてきた。ビートルズからエイミー・ワインハウス、アイゼンハワー以後歴代のアメリカ大統領まで、ベンソンの写真は被写体を間近でとらえ、その素顔に迫ることで知られる。

そんな姿勢を象徴するのが、1968年6月5日、ロバート・F・ケネディが撃たれた瞬間、そのすぐ横に立っていたという有名な話だ。恐怖を覚えながらも、目の前で起きた衝撃的なできごとを精細かつ確実にカメラでとらえた仕事は、彼の代名詞にもなっている。ベンソンが生涯をかけて手がけてきた仕事をまとめた近刊『Harry Benson: Persons of Interest』では、スコットランド時代の若き写真家だった初期の写真から、最近のアメリカ大統領選をとらえた写真までを通じ、その歩みを振り返っている。( 2018年1月28日 )

『 PERSONS OF INTEREST / HARRY BENSON  2017 』

 

『 モハメド・アリ。メイン州ルイストンで。1965年5月25日 』

『 2001年9月11日のニューヨーク 』

『 クリントン夫妻。アーカンソー州リトルロックの州知事公邸で。1992年 』

『 ロナルド・レーガン大統領とナンシー・レーガン大統領夫人。ホワイトハウスで。1986年 』

 

 

上記作品中『 2001年9月11日のニューヨーク 』は、正直なところ“ヒジョーに痛みを伴う極めて特別な作品”でありますが、ハリー ベンソンさん作品から漂うイメージには内面の優しさ、意志、覚悟と云った“ヒューマニズム満載”で御座いまして、他の“報道(ドキュメント)写真家”さんとはある種異なる“独特の香り”が感じられます。そしてソノ香りは何故か、“常に真実を写しているのでは?”と思わせてくれる気が致します。

例えるならば、私の様な変態オッサンであっても“文学的気分で向き合える見事な作品群”なのでありまして、ソレこそが“ハリー ベンソン テイスト”なのかも知れません。

 

 

ところで、等サイト ブログ部門の超有名人である“ヘンテコな髪型のオッサン”で御座いますが、もし“ハリー ベンソン テイスト”に従うのであれば……………

失礼ながら下記作品は、ドナルド トランプさんが“昔から頭とセンスの悪いお方”であったのを裏付ける証拠かと思われます!

 

『 ドナルド・トランプ。ニュージャージー州アトランティック・シティで。1990年 』

 

 

 

( 写真は全てネットから拝借。)

 

 

 

2018年もROCKな年で ……

誠に“摩訶不思議で縁起の悪い(?)”2018年初夢。

《 旧友である当ブログ プロデューサーの“秀津風親方さん”、“札幌のジェフ ベックさん”etc.とバンドを組んで、地方のロック フェスに出演致しましたが、何とMCさんに我々の存在が伝わっておらず、ステージに登場したら全ての観客さんが既にお帰りでありました。仕方がないのでライブ レコーディングを敢行。“秀津風親方さん”が後処理で歓声&拍手音を合成して、数ヶ月後に「 ライブ イン ジャパン 」として発売する運びとなりました…………… 》

旧ブログ時代に“全ての夢には見るべき理由がある”と申し上げましたが、昔の飲み仲間だった某精神科医さんによる持論で御座います。

今回、そんな“奇妙キテレツな夢”を見た理由として思い当たりますのは、昨年末に【 伝説のライブパフォーマンスを伝える最も有名な24枚の写真 】( BuzzFeed News , 2017年12月22日 )という記事を拝見致しましたので、ソレによる潜在意識的な影響があったのかと思われます……………

 

何故ならば、最近は有名ミュージシャンのお方が一流ファッション誌カバーを飾る機会も多く、“カッコイイ(美しい)ミュージシャンが増えたなぁ”と感じておりましたが、BuzzFeed News記事で改めて“ミュージシャンはライブ フォトが最も神々しい”と再確認したからで御座います。

そこで本日は、初夢の原因“歴史に残る名作ライブ フォト”から数点を御紹介させて頂きます。

 

『 ステージ上で気絶するジム モリソンさん ( ドアーズ )  1968 』

ジム モリソンさんと云えば、ステージ上でマスターベーションして逮捕されちゃったりとか、“過激なステージングとメッセージ性の強い歌詞”がウリでありました。御大フランシス コッポラ先生とはUCLAの同級生。

 

『 ギターを破壊するピート タウンゼントさん ( ザ フー )  1967 』

ピート タウンゼントさんの他にも、アイキャッチ画像に使わせて頂いたジミ ヘンドリックスさん、ジェフ ベックさん、リッチー ブラックモアさん等、当時はとにかくライブ中にギターを破壊(又は焼却)するのが大流行。所謂“反体制を表現するパフォーマンスの一環”とも考えられますが、破壊する直前に、“MADE IN JAPAN コピー ギター”とすり替えるのがお約束。

 

『 ロバート プラントさん ( レッド ツェッペリン )  1977 』

ロバート プラントさんと云えば、私の中学校〜高校時代に於いて“最強アイドル”でありました。変態オッサンが初めてパーマをかけた際に、ロバート プラントさんの写真を持参して「こんな感じにして下さい。」と頼んだら、何故か“子門真人さんライクな髪型”に……………

 

『 ローリング ストーンズさん  1978 』

ローリング ストーンズさんは本年で“デビュー56周年”。老いてなおエネルギッシュで“完全無敵のジジイ軍団”でありますが、未だハツラツさが残る活動中期の勇姿を捉えた逸品。

 

『 パティ スミスさん  1976年 』

1970年代に“クイーン オブ パンク”と呼ばれ、正にニューヨーク パンクシーンの先駆者だったパティ スミスさん。どちらかと云えば“ユニセックス イメージ”が御座いましたが、ケッコー美しいお方だったんデスねぇ。

 

『 エルビス プレスリーさん  1956 』

説明不要な“キング オブ ロックンロール”エルビス プレスリーさん。実は“アメリカン ロックスターの愛車 = メルセデス ベンツ”だった時代に、BMWを有名にしたお方でもありました(1957年式「 BMW507 」を御愛用)。ボディー カラーを敢えてレッドにしたのは、ファンが“赤い口紅でメッセージを書き込むから”だとか。

 

 

ところで、私は2013年より“美術館も映画館も無い町”に移り住み、本年で早くも5年となりました。よってライブにはスッカリ無縁となってしまいましたが、スピリットだけでも“ROCKな2018年”であって欲しいと切に願います……………

そこで、“ROCKな2018年”のスタートに相応しい始動感(躍動感)炸裂のビデオ クリップを御覧頂きたいと思います。

ローリング ストーンズさん初のカヴァー アルバム『 ブルー&ロンサム ( Blue & Lonesome )  2016 』より、“低予算ながら激クールなビデオ クリップ”で御座います。因みに、街中あちらこちらに登場する“ストーンズ アイテム”にも御注目下され。

 

『 Ride ‘Em On Down / The Rolling Stones  2016 』

 

では、本年も宜しく御願い致します!

 

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

 

 

 

広告写真の行く末 ……

旧ブログで以前、ヨーロッパ(特にフランス)で過敏になりつつある“CGリタッチによる広告規制”について取り上げましたら、男女それぞれの立場から様々な御意見を頂き誠に有難う御座いました。

 

ソノ際に問題となっておりましたのは……………

✳ 1 ) 「CGリタッチによって肌を美化した化粧品広告は、消費者に“使用すると誰もが美しい肌になる”との誤解を与えるもので、詐欺的要素が強く望ましくない。」

✳ 2 ) 「CGリタッチによって体型を補正したファッション広告は、消費者に無理なダイエットを促し、“健康被害に繋がる懸念がある”ので望ましくない。」

ソノ時点ではフランスを中心とした風潮でありましたが、つい先日“風潮ではなく法律として制定”されてしまい、話は更に複雑な様相に突入致しました(以下引用)。

 

 

【 商業写真でモデルの体型を加工したら…フランスで新法律が施行 】( HUFFPOST )

商業写真のモデルの体型を、フォトショップなどの写真加工ソフトを用いて修正した場合に、「photographie retouchée(修正写真)」というマークをつけることを義務付ける法律が、フランスで施行された。体型を細くしたり、肉付けしたりといった加工に適用される。「France24」など複数のメディアが報じた。

法案自体は2016年1月に議会で可決されていたが、10月1日から施行されることになった。違反した場合には、最大3万7500ユーロ(日本円で約500万円)の罰金が課されるという。フランス政府は、子どもたちや若者が晒されている”現実離れしたボディイメージ”を少しでも減らすための法律施行だとしている。( 2017年10月2日 )

 

 

私は、1982年〜1999年迄の17年間ヘアメイクを仕事としておりましたが、晩年は主にCMや広告が中心でありまして、化粧品会社さんのビューティー ショットも数多くやらせて頂きました。素人見には“一切手を加えていない写真”に見えても、実際には“眼球の白目をより白くする”とか、“肌をより滑らかにきめ細かくする”etc.の修正技術(CGリタッチ)は、1990年代既にポピュラーなテクニックとして採用されておりました。私の記憶によればアドバタイジング フォトの約80%、エディトリアル フォトの約40%がCGリタッチされていた様に思います。

そーやって創造された画像は、物理的には確かに“実態と違う付加価値”を伴って世間に露出する訳でありますが、「◯社の広告はいつも極端に写真が修正されているので、◯社の商品は信用出来ない。」と決めるべきは消費者側でありますので、はたして法律で規制するべき事案でしょーか?……………

 

例えば、ある画家が風景画を描いていると致します。

“電柱と電線が気になったので省略して描いた”としても、ソレこそが“画家としての個人センス”であり、クリエイターとして極めて真っ当な芸術表現だと考えます。ですから上記フランス案件に関しましては、商品がもし“医薬品(又は医薬部外品)の類い”であるならば理解出来ますが、ファッション性の高い商品に該当する今回の規制は、“クリエイティビティー”や“イマジネーション”といった広告の“最重要要素”を著しく削いでしまい、広告(並びに芸術表現)に大きな“足枷”を掛けてしまうのは間違いありません。

 

 

『 CHANEL No.5 / Photo : Baz Luhrmann , Model : Nicole Kidman  2005 』

『 CHANEL No.5 L’EAU / Photo : Karim Sadlit , Model : Lily-Rose Depp 2016 』

『 Dior DIORSHOW MASCARA / Photo : Craig McDean , Model : Ondria Hardin 』

『 LANCOME / Photo : Charles Helleu , Model : Emma Watson  2013 』

 

 

特筆すべきはコレが、“モードの本家フランス”主導で行われている規制である点。つまりフランスは、もはや“広告表現に於いて先進国から脱落”したも同然であり、よってフランス広告の魅力は、今後一気に急降下するかと思われます。

因みに、私のパリ在住経験から言わせて頂けば、フランスという国は“決定事項がエスカレートするお国柄”であります。ですからCGリタッチに始まった規制が、いつの間にか“商業モデルの美容整形禁止”に発展して、そして挙げ句の果てには「 整形インターポール 」的な組織が誕生し、“整形疑惑”のあるモデルさんや女優さんの情報管理を行うのでは?と、ヒジョーに心配になってしまった変態オッサンで御座います!

但しフランスは、“決定事項が長続きしないお国柄”でもありますが……………

 

 

『 SAINT LAURENT / Photo : Hedi Sliman , Model : Freja Beha Erichsen  2013 』

『 Calvin Klein underwear / Photo : Mario Sorrenti , Model : Christy Tarlington  2013 』

 

 

ところで、『 CHANEL No.5 L’EAU 』モデルのLily-Rose Depp(リリー ローズ デップ)さんは、かのジョニー デップさんとバネッサ パラディさん“元御夫婦”のお嬢様であり、何と“親子二代で天下のCHANELミューズ就任”という偉業を成し遂げました。

“親に迷惑をかける二世タレントさんが多い”我が国に比べると、“何かが決定的に違う”のかも知れません……………

 

 

✳ 今回使用させて頂いた写真は、飽くまでも“美しい広告写真の一例”として御紹介したものであり、決して“修正写真の一例”では御座いません。

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

 

 

 

 

広告写真の王道 ……

若い頃に17年間“ヘアメイク”という仕事をさせて頂きましたが、キャリアの後半はCM(広告)が多かったので、必然的にCM監督さんやCMプロデューサーさんとお酒を御一緒する機会が多く、楽しく勉強させて頂いたのは誠に有り難い経験だと感じております。色々なお方から教えて頂いた結果、自分なりに考える“理想的なCM(広告)”は、説明的な演出やナレーションに頼る事なく、自然な演出とストーリー テリングによって、何となく“良い商品なんだろーなぁ”と感じさせる作品で御座います。

例えるならば、50代以上のお方にしか御理解頂けなくて恐縮でありますが、80〜90年代のMarlboro( マールボロ )さんのCMであります。「 Marlboro Country 」とネーミングされた一連のシリーズは、巧みな演出と美しい映像及び音楽から「 タバコって美味いねぇ。」と心底思わせてくれたモノであり、当時は喫煙者だった私も、Marlboroさん製品を購入しまくった経験が御座います。但し、残念ながら近年の禁煙ブームによって、タバコ メーカーさんCM(広告)を拝見する機会は、今後も増える事は無いかと思われます……………

撮影業界を辞めて18年も経過致しましたが、未だにCM(広告)が気になってしまう変態オッサンが、テーマ性と写真のインパクトから“サスガ”と唸ってしまったのがLouis Vuittonさんの広告であります。

 

 

上から「 キース リチャーズ編 」「 カトリーヌ ドヌーブ編 」「 ゴルバチョフ 元ソ連大統領編 」( 全て2007年作品より )

 

上記は、有名写真家アニー リーボビッツさん( Annie Leibovitz : アメリカ , 1949〜 )による“旅”をテーマにしたシリーズ。アニー リーボビッツさんはドキュメント フォトグラフ出身でありまして、後にファッション フォトグラファーとして“天下のVOGUE誌”専属となったお方であります。よってソノ芸風は、ドキュメンタリー タッチで存在感大のポートレイトを得意としており、このキャンペーンは正に“ハマり役”なので御座いました。

因みに、キース リチャーズさんは「ルイ ヴィトンのギター ケースを作ってくれるんなら、ギャラなんかいらねぇよ。」と、言ったとか言わなかったとかの逸話が残っております。

 

そんなLouis Vuittonさんの最新広告「 SERIES 7 」は(以下引用)……………

 

【 ルイ ・ヴィトンの新広告キャペーンにソフィー・ターナーが登場! 】( Harper’s BAZAAR )

ルイ・ヴィトンの2017-18秋冬広告キャンペーン「Series 7」が公開された。
今回は、粗野なエレメントとはっきりとしたラインが特徴のインダストリアルな世界がテーマ。ブルース・ウェーバーが映画のような理想の舞台を背景に誰も見たことのないキャラクターやパワフルなヒロインを捉え、ロマンチックなバレエ仕立てのストーリーを展開。そのストーリーにおいて予期せぬ侵入者を演じ、ニコラ・ジェスキエールのイマジネーションをモデルとして体現したのが、そうそうたる著名人たち。(2017年7月9日)

 

 

 

何と“あの”ブルース ウェーバーさん( Bruce Weber : アメリカ , 1946〜 )入魂ヴィジュアルで御座います!

Louis Vuittonさんという“名門ハイ ブランド”の重厚さを残しながらも、カジュアルで若々しく落とし込んだ世界観の妙技。ハイ ブランドの共通した課題である“ブランドのリフレッシュ(若返り)”が重要な問題である点を考慮し、セレブ モデルの魅力を充分に昇華させた、極めて見事な“戦略的広告”だと感心致します。

しかしながらブルース ウェーバーさんと云えば、モノクロ作品が余りにも秀逸でありますので、今回のキャンペーン フォトに対しては、“カタログ撮影定番のグレー バックで新鮮味に欠ける”との御意見多数でありますが、ライティングと構図の巧みさは如何にも“ブルース ウェーバー節”でありまして、広告写真王道の安心感と説得力に関しては、ブルース ウェーバーさん監督の以下ショート ムービーを御覧になれば、誰もが納得して頂けるかと思います……………

 

『 Louis Vuitton Series7 / Bruce Weber ( 2017 ) 』

 

 

( 画像は全てネットから拝借。)

 

 

 

デザインよりも重要なブランド姿勢 ……

ヘアメイク時代、私にとって最大の憧れだった“スーパー フォトグラファー”ブルース ウェーバー(Bruce Weber,1946〜)さん。

実は1996年1月、ニューヨークに於いて“最初で最後の接近遭遇”がありました。当時私はブック(作品ポートフォリオ)を持ってニューヨークのエージェンシーを廻っておりましたので、“ダメ元”でブルース ウェーバーさんのエージェントに「ブックを見て頂けませんか?」とお電話致しましたところ、案の定「ブルースは時間が取れないので、3〜4ヶ月後に改めて御連絡下さい。」とアッサリ断られてしまいました……………

ブルース ウェーバーさんと云えば、「 カルバン クライン 」さんや「 ラルフ ローレン 」さんのワールド キャンペーンが余りにも有名ですが、それらの広告写真に見られる“セクシュアルかつスキャンダラスな写真”こそが、ブルース ウェーバーさんの真骨頂でありました。

ところが、そんな“ブルース ウェーバー ワールド”の中でも「 アバクロンビー&フィッチ ( Abercrombie&Fitch ) 」さんキャンペーンは世界観が異なりました。

 

まるで“名門高校のドキュメンタリー”ライクな写真群。

コノ“新生ブルース ウェーバー ワールド”は、新たな魅力満載で御座いましたが(以下引用)……………

 

【 かつての「憧れブランド」アバクロ、衰退の裏に潜む差別主義 】(Forbes JAPAN)

かつては米国で最もホットなブランドだった──。グランジファッションの流行が過ぎた去った1990年代後半、十代の若者たちが求める軽快でカジュアルな、東海岸のアイビーリーグを思わせるスタイルを売りに登場したアバクロンビー&フィッチ(A&F)は、当時の米国のファッションを特徴付ける存在となった。だが、A&Fとその姉妹ブランドであるホリスターはその後、凋落の一途をたどっている。どちらもすでに過去を象徴するものとして、すっかり魅力を失ってしまった。ロイターが5月10日に報じたところによれば、A&Fは投資顧問会社ペレラ・ワインバーグ・パートナーズに依頼し、身売り先を探しているところだ。同じ記事によると、同社の営業利益は2015年の7280万ドル(約83億1400万円)から、翌年には1520万ドルに減少している。(2017年5月14日)

 

簡単におさらいさせて頂きます。

「 アバクロンビー&フィッチ 」さんは、1892年にデイビット T アバクロンビーさんがアウトドア ショップとしてニューヨークに開業。かの“文豪”アーネスト ヘミングウェイさんも常連という名店でありましたが、1992年にマイケル ジェフリーズさんがCEOに御就任されて以降は、カジュアル ファッション ブランドに大変身致しました。

ところが、マイケル ジェフリーズさんは白人系アメリカ人優先雇用により“人種差別の疑いで集団訴訟”された他にも、多数の“差別に関わる訴訟”で訴追されており、「 アバクロンビー&フィッチ 」さんというブランドは、残念ながら常に“反社会的”な話題を提供し続けました。随分と昔、カール ラガーフェルドさんやジャンニ ヴェルサーチさんが「私の服が着たければ、私の服にあなたの体型を合わせるべきだ。」的な発言をなさいましたが、カジュアル ファッション ブランドCEOであるマイケル ジェフリーズさんも、過去のインタビューで同様の発言をなさっております……………

 

2009年、我が国に「 アバクロンビー&フィッチ 銀座店 」がオープンした際も、“ストア モデル”と呼ばれるイケメン店員さんに関してや、“香水の香りがキツ過ぎる”と近隣店舗からクレームが殺到した事や、“約1億2000万円”と言われた1ヶ月分賃料の高さがケッコーな話題になりましたが、肝心な“ブランド ポリシー”の話題は少なかった様な気が致します。

 

そして2010年、“鳴り物入り”でオープンさせたジャパン2店舗目の「 アバクロンビー&フィッチ 福岡店 」は、既に旗艦店ではなくアウトレット店になっておりますし、2010年以降のアメリカ国内店に限っても、何と“約300店を閉店”したとの情報も……………

 

そこで、私なりに「 アバクロンビー&フィッチ 」さんの敗因を分析させて頂きますと、以下の物理的要因が考えられます。

✳ 1 ) アジア地域にビジネス展開するのが遅過ぎたのでは?

✳ 2 ) ファブリック、縫製クオリティーに対して商品価格が高過ぎたのでは(特にアジア地域)?

✳ 3 ) エンターテインメント性を重視し過ぎたのでは?

 

しかしながら、最も重要な問題は“ブランド背景”にあったのだと思います。

例えば私は若い頃、“高田 賢三さんの服しか着ない時期”が約20年間続きました。何故ならば、高田 賢三さん御本人のお人柄に感銘を受け“こんな方がデザインした服を着れて幸せだ”と感じ、よって着る事自体がヒジョーに心地良かったからで御座います。

つまり“商品”というのは、“ブランド(企業)背景並びに姿勢”を含めての“商品”なのであります。同じジャンルに限っても、世界中に選択肢が無限大に存在する現在、「 アバクロンビー&フィッチ 」さんの商品がソノ点で魅力不足なのは否めません……………

 

モノ選びのポイントはデザイン、性能、使い勝手に加えて、“ブランド姿勢”を重要視したいと思う変態オッサンでありました!

 

⬆ スーパー フォトグラファーなのに、意外と知られていないブルース ウェーバーさん御本人のお顔。因みに、首から下げていらっしゃる愛機は「 PENTAX ( 6×6 ) 」かと思われます。

 

( 写真は全てネットから拝借。)

 

改めて実感するトム フォードさんの偉大さ ……

『 イヴ サンローラン  ( YSL ) 』ブランドと云えば最近は“口紅が特に有名”であります。『 イヴ サンローラン 』ブランドの口紅は、昔からソノ発色の良さには定評があり、ヘアメイク時代の私もケッコー使わせて頂きましたが、化粧品部門がロレアル(フランス)さんに買収されて以降は“破竹の勢い”で売れ続けており、今ではスッカリ『 イヴ サンローラン 』ブランドの代名詞となりつつあります。

しかしながら、云うまでもなくイヴ サンローラン( 本名 : Yves Henri Donat Mathieu – Saint – Laurent / 1936〜2008 )さんが1962年パリに設立したメゾンでありまして、長期に渡って“モード界の帝王”として君臨なさいました。御本人他界後の現在もトップ モード系“スーパー ファッション ブランド”のひとつで御座います。

因みに、イヴ サンローランさんから“パリ コレクション 大トリの座”を初めて奪い取ったのが、正に“我が国の誇り”であり私がパリ時代に最もお世話になった高田 賢三さんであります。

そんな“老舗(しかも良家)”『 イヴ サンローラン 』ブランドが、2015年の「 不健康な痩せ過ぎモデル広告事件 」by ASA(イギリス広告基準協議会)に続いて、今度は「 女性蔑視広告事件 」by ARPP(フランス広告規制局)で話題となってしまいました(以下引用)。

 

【 サンローランの広告に批判殺到、女性の「品位を傷つける」】(ロイター)

3月6日、フランスの広告規制当局は、高級ファッションブランド、イブ・サンローランに対し、広告キャンペーンの一部写真を変更するよう要求した。「女性の品位を傷つけている」との苦情が50件寄せられたためという。写真はパリの新聞スタンドに貼られたサンローランの広告。(2017年3月7日)

 

先ずは“先進資本主義国に於いて、公的機関がたった50件のクレームで一流企業に警告指導するんかいな?”並びに“コノ広告に対して、猥褻性や差別性を感じた国民が圧倒的過半数居るんかいな?”と、思いっ切りツッコミたいところでありますが、本日の本題はソレでは御座いません。

 

2012年にエディ スリマン( Hedi Slimane / フランス、1968〜 )さんが『 イヴ サンローラン ( 現ブランド名 : サンローラン パリ ) 』のクリエイティブ ディレクター(総監督)に就任なさいました。

そして2015年の「 不健康な痩せ過ぎモデル広告事件 」が発生致します。

エディ スリマンさんは、上記広告写真の引責辞任なのか2016年に“電撃辞任”してしまいます。後任にアンソニー ヴァカレロ( Anthony Vaccarello / イタリア、1982〜 )さんがクリエイティブ ディレクターに就任なさいまして、コーリアー ショアーさん撮影による“誠に美しいスーパー ナチュラル広告写真”を発表し、世界中に“イヴ サンローラン新時代の到来”を予感させたのでありました。

ところが、今回の「 女性蔑視広告事件 」で御座います。“迷える良家”本当にダイジョーブなのでしょーか?……………

 

近代モード界の画期的な事例としては、トム フォード( Tom Ford / アメリカ、1961〜 )さんが1990年代にGUCCIのクリエイティブ ディレクターとして服のデザイン、広告イメージ、店舗デザインetc.の全てを統括し、かつての“イタリア おばさん向けブランド”を見事にリフォームして、モード界に“前人未到の大金字塔”を打ち立てました。よって以降のファッション ブランドは、デザイナーに服飾デザインだけではなく“トータル イメージング”を要求するのが業界トレンドとなりました。

実はコレが“最も重大なミステイク”なのであります……………

 

何故ならトム フォードさんはGUCCI退社後、「 A Single Man 」「 Nocturnal Animals 」という2本の映画を監督なさいましたが、共に世界中で高評価を得たお方であり正に“天才トータル ビジュアル プロデューサー”なのであります。つまりトム フォードさん以外のお方に、トム フォードさん同様の業績を求めるなんぞ“地球上では不可能”なので御座います。

世界中のファッション ブランド オーナーさんに於かれましては、どーか“デザイナーさんは服のデザインに集中して頂き、広告イメージに関しては専任アート ディレクターさんに一任する環境構築”を御検討下さいませ。

失礼ながら、変態オッサンからの切実なお願いであります……………

 

ところで、段取りの悪さ故にか最近は全く話題にも上らない「 TOKYO OLYMPIC 2020 」でありますが、私はトム フォードさんに“エグゼクティブ プロデューサー”として是非とも御参加頂きたいと思います!

( 写真は全てネットから拝借。)